息を切らしながら、俺は学校に着いた。丁度、うちの体育教師、通称・[鉄壁]が、学校の門を開けようとしていたところだった。

“ま、間に合ったぁ~!”

 呼吸が荒い中、俺はそう思いながら肩を下ろした。遅刻するかもということだけで頭がいっぱいだったからだ。
 一度、深呼吸をして息を整える。そして、鉄壁にいつも通りにこやかに挨拶をした。

「おー、お前かぁ。早いなぁ!」
「おはようございます」
「あぁ。頑張れよ」
「はい」

 自分を作ることほど簡単で疲れるものはない。最近、そんなことしか考えなくなった。教師や先輩、親や兄弟などの親友以外に見せる顔、態度、行動が本当の自分とあまりにもかけ離れている。自分でもどうしてこんなことをするのかはわからない。でも確かにわかるのは、俺に親友と呼べる奴は一人しかいなかったということだけ。それも昔の友達だから時の人。でも最近は

“会いたいな”

 って思う。会えなくなってから6年間、思い返すこと事態無かったんだけどな。



 家の中を通らず、部屋のバルコニーから直接車へ私は向かった。こんな感じだから家族との会話なんてほとんどない。話すことと言えば、父とのこの送り迎えの会話くらいだった。母親とは仲が悪く、騒がしい所が苦手な私は、兄弟とも仲が悪い。だから、話す気にもならなかった。
 基本、私はあの部屋から出ることなんてない。出るとしても学校に行くくらいで、後の時間は寝ているか、本を読んでいるかだった。
 もともと病弱な私は、外を出歩く意義さえなかったのが事実。そんな生活でつまらなくないのかと何度も聞かれたことがあるけど、そこまで退屈なんてしていなかった。それに、自分のペースで過ごせているからと、特に気にしていなかった。
 最近、ふっと会いたくなる人がいる。その人とは、もう小学校低学年以来になるのかも。すごく懐かしい人だった。でも、

“覚えてないんだろうな…”

 ずっと会ってなくて、思い返すだけだったから、懐かしいその人は私のことを忘れているのだろうと勝手に決めつけた。
 自分が悲しまないためにそう思うことにしていたの。だって、私にとって唯一の友達だったから、なるべく悲しまずに許したかったのだ。
 そうしないと自分が傷つくだけだと思った。理由は簡単、その人には新しい友達が出来ていると思っていたから。