初夏の生暖かい、気持ち悪い風の吹く中、俺は遅刻寸前だった。

「やばい!遅刻だ!!」

 いつも通り早起きしたはずの俺が、どうして遅刻しそうになっているのかというと、だ。クラスの投票で学級委員長になってしまった俺が今日来る転入生を、門の前で迎えることになっていたのだった。
 学校へ行く準備を超特急で済ませ、

「行ってきます!!」

 と家族に向かって叫んだ。そして、

“こんなこと、先生がやってくださいよ~(-_-;)”

 なんて考えながら学校まで全速力で自分の体を走らせていた。中学の時、陸上部のスタメンだったことからか、走るのはそこまで苦ではなかった。でも体がちゃんと起きていないせいのか、ろくに何もしなかったせいなのか、やっぱり学校まで距離は辛かった。



 初夏の光が窓を照らしていた。

“もう朝かぁ…”

 そう思いながら、私は重たい体を無理やり起こし、新しい学校へ行く準備をし始めた。前の環境では身体に悪影響だっと父が言って、田舎のこの学校に転入することになってしまった。
 もともと、私の体は強い方ではなく、どちらかというと病院にお世話になってばかりだった。だから、環境のせいで転校転入を繰り返すのなんてよくあることだった。こんな暮らしをしてきて、もう6、7年くらいになるのかな。仲良しの人と離ればなれになるのなんて、もう慣れっこだった。それに最近は友達さえも作りたくなくなってきている。理由は簡単、いつまた転校するかわからないから。
 こうやって、変なことを考えている内に、

「行くぞ」

 と、父がドア越しに声をかけに来る。いつも学校まで送りに来てくれるんだ。私は黙って家の外に出て、助手席に乗るのだった。