昼休みが終わる頃だった。

ガラガラガラガラー。
教室のドアが開いた。
一瞬、教室内が静まったがすぐに戻る。
もう、昼休みだというのに堂々と教室に入り、窓際の1番後ろの席に座った1人の生徒。


その人物は‥‥‥。

『大友ミカ』

ミカはパーカーのフードをかぶり耳にイヤホンを付け、窓の外を眺めていた。


「ねぇ、大友さんまた昼出勤だよー」
ミカに気づいた可南子が言った。

「あの人、タトゥーはいってるって本当?」
「それ!ウチも聞いた事ある。だからそれ隠す為に夏でもパーカー着てるんでしょ」
「ってゆうか、あの人色々とヤバイ人なんでしょ?」
「相当ヤバイらしいよ」
可南子たちがミカの事を話しだした。

だがけして、ミカに聞こえるようには言わない。


ミカには悪い噂がある。
援助交際、薬、暴走族に入ってるなど‥‥。
他にも色々あるが、これらの噂が全部真実なのか、只の噂にすぎないのかは誰も本当の事は分からなかった。

ミカの存在はクラスで虐められている訳ではなかった。

ただ、誰もが近寄りにくい存在だった。
本人に直接何も言わないし、近づく人はいなかった。

普段、偉そうにしている可南子さえもミカには何も言えなかったし、言ようともしなかった。

それにミカは留年している為、歳が1つ年上というのも大きな理由の1つだったのかもしれない‥‥。

でも、そんなミカにユリアは憧れていた。

『1匹狼‥‥その事を何とも思っていない。
けして誰かに媚びたりしない。自分にはない物を持っている気がした』

それにユリアは色んな悪い噂を聞いてもミカの事を1度も悪い人なんて思った事はなかった。
ユリアにはミカは悪い噂の人ではなく、『優しい人』だと確信があったからだ。