ー30分後ー

「佐田ーー!!ちょっとこっちに来れるか?」
三井に呼び出された。

ユリアは一緒に準備していた女子に一言声をかけてから三井の所に向かった。
三井に近づくにつれ、気がついた。
三井の横にミカがいる事に‥‥。

あれって、大友さんだよね‥‥本当に来てくれたんだ。大友さんの私服姿なんて初めて見た。
ユリアはミカが来てくれた事が嬉しくなった。

「おい佐田!何、ニヤニヤしてるんだ?」
「えっ、別にニヤニヤなんて‥‥」
「フッ、まぁどっちでもいいけど、それより悪いんだけど大友と買い出しに行って来てくれないか?」
「買い出しですか?」
「そう、買い出し。思ってたより飲み物と食い物が足りねぇみたいだから適当に買ってきてくれ」
「別に構いませんけど‥‥」
「じゃあ、そういうことでよろしく~」
「えっ?」
「あぁ、お金なら大友に渡してあるから」
「そういう事じゃなくて‥‥まぁ、はい分かりました」
大友さんと2人きりかぁ。何か緊張してきた。

コンビニは海岸から歩いて10分ぐらいの所にある。ミカはすでに歩きだしていた。
ユリアは急いでミカの後を追った。

すぐにミカに追いついたが、何を話しかけていいのか分からなかった。
ユリアは黙ってミカの後を付いて歩く事しか出来なかった。

何て声をかけたらいいんだろう?
っていうか、また三井先生にハメられた気がするんだけどな‥‥。

そして、ミカと一言も会話をしないまま、あっと言う間にコンビニの前に到着していた。
ミカは先に店の中に入って行ってしまった。

あ~あ、結局、大友さんと一言も喋れなかったなぁ。

ユリアが残念そうに店の中に入ろうとした時、入り口に張っていた大きなポスターが目に入った。そのポスターには苺パフェの写真に
『苺フェア開催!おすすめ☆苺パフェ』と書いてあった。

この苺パフェ、美味しそー。食べたいなぁ。
ユリアは少しポスターに見とれていた。

あっ!?ダメだ。大友さんを追いかけないと‥‥。

急いで店の中に入りミカを探した。
ミカはお菓子コーナーでお菓子を選んでいた。ユリアは慌ててミカに声をかけた。

「あの~、すいません。カゴ持ちます!」
「後少しで終わるから大丈夫...」
「あっ、でも...」
「‥‥じゃあ、はい」
ミカはカゴをユリアに渡した。

「後は適当にジュース買って帰るだけだから」
「はい」
2人はジュースを選び、レジ゙に向かった。
すると、ミカがユリアに話しかけてきた。

「後はお金払うだけだから先に外で待っててもらっていいよ」
「はっ、はい」
ユリアはミカに言われた通り、外に出て待つ事にした。

はぁ~、私もしかしてお邪魔虫だったかな?
何もしてないし、役立たず丸だしだな。
それとも、大友さん怒ってるのかな‥‥。

少ししてからミカが店から出てきた。
ミカは買い物袋を2つを腕にかけ、右手には‥‥『苺のパフェ』左手には『抹茶のソフトクリーム』を持って出ていた。

「はい、コレ」
ミカが苺パフェをユリアに差し出した。
「えっ?」
「早く持って溶けちゃうよ」
「あっ、すいません」
ミカは苺パフェをユリアに渡すと抹茶のソフトクリームを食べながら歩きだした。

「あの、大友さん!コレ頂いていいんですか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます」
「まぁ、私のお金で買ったんじゃないけど‥‥」
「ふふっ、でも嬉しいです。私、いちごが大好きなんです。あっ、その荷物持ちます!!」
「別にいいよ、そんなに重くないし」
「でっでも‥‥」
「コレ持ってたら食べにくいでしょ?気にしないで大丈夫だから」
「じゃあ‥‥1つだけ持たして下さい」
「分かった‥じゃあコレ、はい」
ミカは買い物袋を1つユリアに渡した。

「!?」
ユリアは気がついた。

ミカに渡された買い物袋は明らかにミカが持ってる買い物袋より軽い方を渡された事に‥。
ユリアはそんなミカの優しさが嬉しくなった。
自分が食べたかったパフェに気づき、わざわざ買ってきてくれた事。ワザと軽い方の荷物を渡してくれた事。

こんな風に自分に気を使ってくれる人は初めてだった。
自分が思ってた通り悪い噂から想像出来ないぐらい優しいミカ‥‥。

ミカの事をもっと知りたい。
ミカと仲良くなりたい。
‥‥‥友達になってもらいたいと思った。
そんな強い思いがユリアの心を大きく動かせた。

「あの、大友さん!!」
ユリアは歩いていたミカを呼び止めた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」
ミカが立ち止まった。

「突然変な事言って申し訳ないんですけど‥‥
あの大友さん、私と友達になってもらえませんか?」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

「ダメ‥‥‥ですか?」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

「無理に私なんかと関わらなくても‥‥あなたにはいつも一緒にいる友達がいるんじゃないの」

「えっ‥‥」
ユリアは返す言葉が思いつかなかった。
頭の中が一瞬で真っ白になった。

そしてその場で立ちすくんでいた。