「ミカちゃんの病気の事は聞いてる?」
「はい、今さっき‥‥」
「そっか‥‥」
「あの~、ミカの病気は治らないんですか?」
「う~ん、それは難しい質問だね‥‥。
治るよ!とも治らない!とも言えない病気だからね‥‥」
「そうですか‥‥でも、長くは生きられないって聞いたんですけど?」

「う~ん、ミカちゃんの病気はまだ、確実な治療法が見つかってないの‥‥でも、これから見つかる可能性もある」
「見つからなかったらどうなるんですか?」
「ミカちゃんから聞いたとおりになるかもしれない」
「そんな‥‥‥」
「でもね、『病は気から』って言葉を聞いた事ない?」
「ありますけど‥‥」
「私が思うに人間ってね!1人だけだと考え込んだり、塞ぎ混んだり、諦めたりする事が多いと思うんだけど、誰かの為、大切な人の為なら頑張れるものだと思わない?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「私が思うに、守るモノができた人間は強くなれる。今のミカちゃんには守るモノができた。守るモノ、それは‥‥」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

「もちろんユリアちゃんだよ」
「えっ!?私ですか?」
「そう!あなたは病気を治す事はできないかもしれないけど、ミカちゃんの病気を和らげる事はできる」
「私がですか‥‥?」
「ミカちゃんにとって、ユリアちゃんは大切な存在。そんな人を置いて死にたいとか思わないでしょ!」
「はい」

「私はね、小さい頃からミカちゃんを診てきたんだけど、ユリアちゃんと出会ってからのミカちゃんは大きく変わった」
「どんなふうにですか?」

「まず、明るくなったし、よく笑う。あんな楽しそうなミカちゃん、初めて見たんだよ。それはユリアちゃんのおかげだと思う」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」
「そんな風に言ってもらうと凄く嬉しいですけど、でも私はミカの何の役にも立ってあげれてない‥‥‥私ばっかり、ミカに甘えて‥‥」
「そんな事ないと思うけど」
「‥‥どうしてそう思うんですか?」

「ユリアちゃんと出会う前のミカちゃんはね!よく『自分は長く生きれないんだからいつ死んでもいい』『死ぬのなんて怖くない、少し人より早く死ぬだけだ』なんてよく言ってた。
だから、新しいお薬をちゃんと飲んでくれなかったし、試してもくれなかった。検査をサボる事なんて、しょっちゅうだったんだよ!
でも、最近のミカちゃんは急に『新しい薬を試したい』って言ってきたり、サボらず、素直に検査を受けてくれるから何があったのか聞いてみたら‥‥何て言ったと思う?」

「何て言ったんですか?」
「『大切な人ができた』『守りたい人ができたんだ』なんて嬉しそうに言うから私はてっきり恋人が出来たと思ったんだけど、ユリアちゃんだったわけ」
「ミカが‥‥‥」
ユリアは嬉しくなった。

「だから、ユリアちゃんはもっと自分に自信持っていいんだよ。これからもミカちゃんの事支えてあげてほしい」
「私に出来ますか?」
「ユリアちゃんだから出来るんだよ!」
「ありがとうございます、こちらこそミカの事、これからも宜しくお願いします」

「うん、もちろん!あぁ~、やっとミカちゃんの大切な人と話せた!じゃ、私はそろそろ行くね」
「本当にありがとうございました」
「こちらこそ、じゃあまた」
月島は立ち上がり、そのまま行ってしまった。