夜桜を見上げたあの夜が、今は遠い昔のようだ。


おぼろ月に照らされた、満開の桜を酒の肴にしながら、宴を楽しんだ懐かしい夜は、もう訪れない。


放射能汚染された地上を捨て、人類は地下に都市をつくり生活を始めた。


東海地震は日本だけでなく地球規模の被害を及ぼし、その後遺症は至るところにまだ生々しく残っている。

防護服と防護マスクなしには地上に出られない。


人類はまさに籠の鳥。

地中深く潜った籠の中で、限られた狭い空間を行き来するだけの鳥。


小鳥が空を飛ぶことを夢見るように、子ども達が未来を熱く語る。


それをただ虚しく聞きながら、いつか再び地上で暮らせたらと願いつつ、年老いていく。