「比呂、くん……」

運命のいたずらか。偶然にしては出来すぎている。

「怪我してない?」
「……大丈夫」

たったそれだけ。それだけの言葉をかけられただけで、心が舞い上がる。
この胸の高鳴りが、単なる気の迷いではなかったことを証明している。

「梶川と一緒じゃないんだ?」

比呂くんは私の周囲を見回しながら言った。

「はぐれちゃって……てか、そういう自分も一人じゃん」
「コウと喧嘩したから」

一瞬、誰のことだろうと思って、すぐに瀬戸くんのことだと気づいた。

(もしかして……昨日の?)

何となく触れづらい雰囲気で、私は懸命に違う話題を探す。

「そ、そういえば超絶絶叫コースターもう乗った?」
「……なにそれ」
「知らないの? お化け屋敷とジェットコースターの融合アトラクション。今人気なんだって!」

先日テレビで特集されてるのを見て、修学旅行で来たら絶対乗りたいと思っていた。

しかし比呂くんは明らかに興味なさそうな顔で、私は話題のチョイスを間違ったとすぐに後悔した。