瀬戸くんに掴まれていた腕が、今度は比呂くんに引っ張られる。
「待っ……なんなの、どうしたの?」
呼び止める瀬戸くんの声も、私の言葉も無視して、比呂くんはどんどん歩いていく。
(こんなところ、誰かに見られたら……)
比呂くんは私の手を引いたまま無言でホテルの廊下を歩き続けると、やかて扉が半開きになっていた倉庫のような部屋に入り込んだ。
幸か不幸か、同じ学校の生徒出くわすことはなかった。
しかし、ただならぬ雰囲気の比呂くんに、私は少し怖くなる。
「こんなところ……勝手に入って大丈夫なの?」
そう言った時、真っ暗な部屋に明かりがともる。比呂くんが電気のスイッチを押したのだ。
「別に、荒らす訳じゃないし」
不意に肩を押され、バランスを崩した私は入って来た扉にもたれる形になる。
同時に、カチャリと音がして鍵が閉まる音がした。

