「別に、比呂くんに何かしたとかじゃないよ。ただのよくある……家族のゴタゴタ? みたいな」
力なく笑って、また歩きだす。
その腕を瀬戸くんが掴んだ。
「ただの……? ただのでそんな顔しないだろ!」
「はなして……」
むなしかった。苦しかった。悔しかった。
私の罪の代償は、ちゃんと差し出した。
それなのに、それなのに。
比呂くんばかりが心配される。
比呂くんばかりが幸せになる。
何より、比呂くんが私から離れていく。
嫌いなのに、憎らしいのに、それがどうしようもなく嫌だと思う。
こんな気持ちは間違っている。
「どうしたんだよ……何があった?」
「放っといてってば!」
私はただ必死で、瀬戸くんの手を振りほどいた――その時。

