義兄(あに)と悪魔と私

 
私は瀬戸くんから逃れるために、店を出た。
仕方なく部屋に戻る道を歩きだしたが、瀬戸くんはそれでも諦めてはくれなかった。

「ついて来ないで」
「だってまだ、肝心なことを聞いてないから」

瀬戸くんの言葉に立ち止まる。
振り返ると、意外にも神妙な表情の瀬戸くんがいた。

「質問を変える。比呂と何があった?」

これは昼食の後の続きなのだと、すぐに思い当たる。

「それを知って、どうするの」
「比呂とは腐れ縁だけど大事なダチだからな。傷つける奴は、例え女でも許さない」
「比呂くんは……いいよね。そこまで思ってくれる友達がいて、可愛い彼女か出来て、私には何もない。お母さんにだって裏切られて……」

そんなつもりじゃなかった。けれど、込み上げるものを押さえきれなくなる。

「おい、何の話――……」

瀬戸くんの言葉が止まる。
私の目から、涙がこぼれた。