麻実にあんな顔をさせてしまうなんて、比呂くんは色んな意味で罪な男だと思った。
私は、麻実と別れ、先を歩く比呂くんを追いかける。
「有坂くん!」
私が声をかけると、比呂くん先程とはうって変わって、だるそうに顔を向けた。
周りに人がいないときは、いつもこうだ。
「何?」
「有坂くん、部活でしょ。旅行委員は私が話聞いとくから、出なくていいよ」
「……別にいいよ」
比呂くんは素っ気なく顔を背ける。
けれど、私は食い下がった。
あわよくばこの男と、同じ時間を過ごさずに済むかもしれないと思ったから。
「遠慮しなくていいよ。私暇だから」
「そういう問題じゃない。旅行委員は二人なんだから、どっちかに押しつけるのは違うだろ」
「あ、そう……? なら、いいけど」
思わぬ正論を言われて、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。

