「でも教えてもらえたのって、麻実が初めてなんでしょ? 脈ありだと思うよ」
「そうかなぁーそうだといいけど」
麻実は自信なさげに俯く。
麻実は女の子っぽくて可愛くて、スタイルもいいし、性格もいい。
男子人気も実は高い。
麻実なら、比呂くんだって気に入らないわけない――そんな考えが頭をよぎった時。
「北見さん、旅行委員……そろそろ行こう」
教室の入口で話し込んでいた私に、比呂くんが声をかけてきた。
「えっ……あ、うん。じゃあ麻実、また明日ね」
私はこの状況に名残惜しそうな麻実な手を振る。
「うん、ばいばい。……有坂くんも!」
麻実は既に背を向け歩き出していた比呂くんに大きく手を振った。
すると、比呂くんが立ち止まって振り向く。
「梶川も、また明日な」
比呂くんがそう言った時の、麻実の顔が忘れられない。
今まで見た彼女の中で一番輝いている、とびきりの笑顔だった。

