義兄(あに)と悪魔と私

 
「じゃあ、次は旅行委員を決めたいと思いまーす」

学級委員長の女の子の明るい声が教室に響く。
我に返って、もう七限目だと気づいた。

「この委員はえーっと、来月の修学旅行の計画を立てたりする大切な仕事です。誰か、やりたい人はいませんかー? ちなみに、男女一人ずつ選出です」

彼女は言って、教室を見渡すが、誰一人として手を挙げる者はいない。

(修学旅行……もうそんな季節かぁ)

私はどこか他人事で、そのうち誰かがやるだろうと決めつけていた。

「まだ、何の係もやってない人から選んだらどうかな」

静寂を破ったのは隣の席の比呂くんだった。

「いいですね、それ」

委員長は笑顔で比呂くんに賛成する。
すると、女子を中心に口々に「賛成」という声が上がりだす。

どうやら、ヒロ様の影響力はこんなところでも絶大らしい。