確かに、何もしないとは言っていない。
私は言葉に詰まり、恨めしげに比呂くんを睨む。

「大体さ、あの一回だけで終わりな訳ないじゃん。俺は秘密を守ってあげるのに、どう考えても割に合わない」
「じゃあ、どうしろと……」
「前に言ったろ、俺に従順な限り、秘密は守ってあげるって」

(そんなの……まるで奴隷じゃない)

「奴隷みたいって思った?」

私の心を読んだかのように、比呂くんが言った。
そして私の腕を掴むと、そのまま引き寄せて床に押し倒した。

「奴隷みたい、じゃない。奴隷なんだよ」

私を見下ろす比呂くんの顔が、憎しみに歪んだ。

「どうして……こんな……私、あなたに何かした?」

何故自分がこんな仕打ちを受けなければならないのか、こんなに嫌われなければいけないのか。

私はこの時まで、そんな自分のことしか考えられなかった。