比呂くんの家庭教師は、毎週木曜日の夜と決まった。
場所は比呂くんの提案で、彼の部屋。
「普通、逆じゃない? 家庭教師は生徒の部屋に行くものじゃないの」
家庭教師が決まってから初めての木曜日、私は初めて比呂くんの部屋に入った。
夜九時、お風呂上がりの比呂くんからは、ほんのりと石鹸の香りが漂う。
「別に俺はどっちでもいいけど。これでも気を使ったんだよ?」
比呂くんは私と二人きりになると、別人かと思うほど素っ気なく、冷たくなった。
普段の猫かぶりには、心底感心する。
「どの辺が気を使ってるって?」
「俺を自分の部屋に入れたくないだろ?」
何故か得意気に言う彼の言葉に、妙に納得した。
(確かに……)
「ほら、そんなところに突っ立ってないで座れよ」
比呂くんは未だ開いたドアの前から動こうとしない私に声をかける。
(だって、このドアを閉めてしまったら……)

