「円に拒否権はありません。あんな成績を取っておいて」
私はすぐに拒否したが、母の反応はにべもない。
やばい、このままでは。
「どうかしら、比呂くん。この子に勉強教えてあげてくれない? 人に教えるのって、きっと自分の勉強にもなると思うわ」
もう私には比呂くんが断ってくれることを祈るしかなかった。
けれど、そんな祈りは虚しく消える。
「うーん。それもそうかも。いいよ、面白そう」
「まぁ、ありがとう! 助かるわ」
母は私の気も知らず無邪気に喜んでいる。
「そういう訳だから、比呂くんにしっかり教えて貰うのよ。円」
思うに、母は比呂くんに甘い。
そりゃ、あんな完璧な少年がいきなり息子になったのだから、仕方がないのかも知れないけど。
不意に比呂くんがこちらを見る。
ふわりと微笑んだその顔に、私は悪意しか見いだせなかった。

