私は半ば比呂くんに引きずられるようにカフェを出た。
「行ってどうするの?」
「良子さんに挨拶しないと。どんな顔するだろうな」
「嫌だよ。やめて……」
比呂くんが知らない男の子に見えた。
出会った時から、いつでも優しかった比呂くんが、汚いものでも見るような顔で私を見下ろしている。
「君が嫌なら、父さんを呼ぶよ。仕事でこれないかもしれないけど。そうだったら電話で聞かせあげる。父さん、悲しむだろうな」
「有坂さんには言わないで!」
比呂くんは、まだ有坂さんには言っていないのだと、私は気づいた。
決定権があるのは、比呂くんではない。有坂さんだ。
だったらまだ、私にできることはある。
「お願い、言わないで。私にできることなら、なんでもする」
「ふーん? 何でもね」
比呂くんは冷たく笑った。

