義兄(あに)と悪魔と私

 
「そ……そんなこと言われても困る! 私にだって苦しい……
他の女のために、私に優しくしないでよ。私を言い訳に使わないで。
好きな人がいるなら、さっさとそっちへ行けばいいじゃない!」

悔しくて、無意識に唇を噛み締める。
口の中に鉄の味が広がった。

俺が円を苦しめている。
だけど、言い訳なんかじゃないから。
この気持ちは、この気持ちだけは。

「違うんだ……俺は、円が好きなんだよ。信じてもらえないかもしれないけど」

永遠に俺の心の中だけにしまっておくはずだった言葉。
円を困らせるだけだと分かっていたが、俺の気持ちを誤解されるのはもう嫌だった。

あんなに傷つけておいて、好きだなんてどの面下げて言えるのか。

俺が円なら、そう言ったかもしれない。
だけど、円は言わなかった。