義兄(あに)と悪魔と私

 
良子さんとのことを訊ねると、あっと言う間に決壊する。

「やめてよ……今更。優しくなんてしないで」

顔を覆ってすすり泣きながら、円はごめんなさい、と言った。

円は良子さんに不倫のことを問いつめてしまったらしい。
もちろん、俺には怒る気などない。
本当に守りたいのは、あの家じゃないから。

「仕方ないよ」
「どうしてそんなに優しくするの? 私のことが憎いんでしょう! 復讐が終わったからって、急に変われるの? 私には無理!」

円は顔を上げると、涙でぐちゃぐちゃになりながら叫んだ。

好きな女の子が泣くのは、胸をしめつけられるように苦しい。
俺は自分が楽になりたいだけだと気づいていたけれど、とうとう我慢できなくなった。

「ごめん。復讐なんて始めるべきじゃなかった。あんなのはただの八つ当たりだった」
「もちろん許されるとは思ってない。それでも、俺ができる償いはこうすることだけだから。罵っても、殴ってもいいよ。円の気がすむまで」