タイミング悪く良子さんが入ってきたのは、丁度店を出ようと思っていた時だった。
出るに出れなくなって、更に北見良隆まで合流した時には気が気ではなかった。
円は円で、勢いで追いかけて行ったくせに、いざ目の前に母親の不倫相手が現れるとフリーズ。
そんな円を上手く連れ出して、なんとか帰りのバス停の前にたどり着いた時は、肩の力が抜けた。
「あの男とはもう関わらないように」
バスを待つ間、良子さんの不倫相手は暴力団の関係者だからと嘘までついて、円に釘を刺しておく。
当然、円は納得しない。
「どうしたの比呂くん。私の心配なんて、変だよ?」
「いいじゃん別に。たまには兄貴っぽいことさせてくれてもさ」
「私、あなたのこと兄だなんて思ったことないから」
俺だって、円を妹だなんて思ってない。
それでも、どんな嘘をついても。
俺が傷つけた君を、これ以上傷つけずにすむのなら、なんだってするよ。

