義兄(あに)と悪魔と私

 
円を抱いた後、足取り重くホテルの部屋に戻ると不機嫌そうなコウが待っていた。

「北見と何してたんだよ。こんな時間まで」
「……家族の話だよ」

そう言っておけば、部外者のコウは詮索しにくいだろうと思った。浅はかな計算。

「嘘つけ、顔を見るのも嫌だって、嫌ってたじゃねーか」

どうやら、コウは想像以上に溜まるものがあったのか、追求の手をゆるめない。

「それとこれとは別の話だよ」

確かに、コウには愚痴ったことがあった。
円が何も知らずに、不倫略奪婚の二人を祝福しているのを見て、苛立っていた頃のことだ。

「納得できないな。比呂と何があったって聞いたら、泣き出したんだぞ……北見。何やってんだよ」
「コウこそ、どうしたんだ? 円のこと気にして、好きにでもなったのか」