義兄(あに)と悪魔と私

 
私は男の人相を頭に刻み付けるために、改めて観察することにした。

母の不倫相手は、スーツ姿でサラリーマン風の男。年齢は母と同じか少し上くらいに見える。
身だしなみはきちんとしていて、清潔感もある。私にこのような年上との趣味はないが、客観的に見て格好いいオジサンという感じだった。

二人の会話は聞こえるようで、聞こえない。
たまに所々、単語が聞き取れる程度だ。推測だが、対した話はしていないように思えた。天気の話とか、ニュースの話とか。

ほどなくして二人は席を立った。これからホテルにでも向かうのだろうと思った。

二人が店を出たのを確認すると、すぐに私も席を立った。

「おいっ……お金は」
「ごめんやっといて!」

比呂くんの制止を振り切り、店を出ようとしたその時。
丁度店の扉の前、私は入ってきた客と正面衝突した。

「わっ……すみません!」

びっくりしたような男性の声。
尻餅をついてしまった私は、鈍い痛みに耐えながら顔を上げた。