それからしばらく、気詰まりな時間が流れた。
私と比呂くんは無言で、母の相手が来るのをひたすら待った。
私のとりあえずの目的は、相手の素性を調べ、母との関係を探ること。
ゆくゆくは母との関係をやめるように説得するとか、そんなことも考えていたが、比呂くんの言ったように事は慎重に運ばなければならない。
家族の維持を第一に考えるならば、おじさんに知られるのは論外。相手の男を説得するにしても、どのような人間なのか見極める必要がある。
その辺は、多少詳しいであろう比呂くんが教えてくれたなら助かるのだが……彼はどこまで協力してくれるだろうか。
私の向かいで、退屈そうに自分のスマホをいじっている比呂くんをチラリと盗み見る。
復讐は飽きたと言った。穏やかに暮らしたいのだと。
どういう心境の変化だろう。
あの悪魔にそんな気持ちが本当にあるのか。
私は未だに、半信半疑だった。

