義兄(あに)と悪魔と私

 
比呂くんの冷めた視線に身体が固まる。
比呂くんはそんな私の髪に手を伸ばし、指に絡めて煽るように言った。

「……怒った?」

何となく、分かってはいた。
私への仕打ちは、私自身と母に対するものも含まれているのだろうとは。

「それは今のあなたと矛盾するね。それじゃあ、復讐はもういいってこと?」

私は比呂くんには答えず、そっと彼の手を外す。
冷静な私に、少し驚いたように見えた。

「うん、まぁ……そういうこと。もう飽きたんだ。過去は忘れて、穏やかに暮らしたいよ」
「ずいぶん自分勝手なんだね……」

私は言ったが、胸の中にモヤモヤと疑念が残る。

(本当に? そんな簡単に忘れられるもの?)

「そうだよ。俺ってそういう人間。許せない? いいよ、俺のしたことを言っても。君にはその権利がある。初めてだったもんな?」