義兄(あに)と悪魔と私

 
「君が想像してる通りの陳腐な話だよ」

比呂くんは薄く笑った。

「二年前、父さんが仕事の関係で出会った女――つまり良子さんと関係を持ち始めたのが始まりだ。母さんはいつも優しく穏やかな人で、父さんの浮気に気づいても何も言わず、一人で溜め込んでいた。
俺はそれにずっと気づかなかった、母さんが自ら命を絶つまで」

馬鹿だろ、と自嘲する。

「母さんが突然自殺した時、初めて母さんが心を病んで通院していたことを知った。自殺はそのせいだろうと言われたけれど、何故母さんがそうなったのかはさっぱり分からなかった。
だけど一ヶ月後、父さんが良子さんと君を紹介してきた。おかしいと思った。だってまだ、一ヶ月しか経ってなかった」

比呂くんは悲しいほどに淡々と話す。
まるで感情を忘れてしまったかのように。

それが逆に痛々しくて、息苦しい。