【ピーンポーン!】
「はーーい」
先生の友人?とか、正直全くもって想像できないけれど、
先生自らそう言うのだから、きっと親しい人なのだろう……。
「今日は珍しくすんなり開けてくれたな。…おっ?なんだ、噂のメイドちゃんか!」
「……ど、どうも……。」
焦げ茶色でサラサラヘアーの先生に比べて、少し明るい茶髪のこの男性は、
先生よりもやや低い身長で、
私の顔をいかにも興味津々って感じで覗き込んできた。
「ハルとの生活に疲れたら、ここに連絡して?」
笑顔でそんなことを言えるくらいだから、この人は相当女性慣れしているのだろう。
「リビングにどうぞ。今、お茶淹れるんで。」
「いやぁ〜…若いのに大変だね〜」
そういって眼鏡の下で思い切り微笑んだその人は、
一言で言うと、
《チャラそう》だ。
「いやぁ〜…いいねぇ〜。
こんなに広い家で若い女の子と二人暮らしってのは、まるで男のロマンを絵に描いたような暮らしじゃねぇの。
なぁ?ハル。」
「んなことより、急に来て泊まりとかやめてくんね?
ウチはビジネスホテルじゃねぇんだよ。」
【刃物の歴史〜500年〜】とタイトルが書かれた本を右手に、先生は二階にある自室からリビングへと、面倒くさそうに左手で後ろ髪を掻きながら降りてきた。
先生は、色白で鼻も高いし、二重瞼に落ち着いた物腰で、それでいて背も180cmは多分越えていて…
体型だって細マッチョって感じで、
時々息抜きにジムにも行っているらしいし…
そんな口の悪さと家事ができないことを除きさえすれば、完璧な先生の友達ということは、きっとこの人だって昔からモテていたに違いない。
まぁ……
私個人は、こういうチャラい人は苦手だけど……;;
「そんな冷たいこと言うなよ〜〜。こちとら仕事も兼ねてんだからさ。」
「clover's(クローバーズ)の原稿は、3ヶ月先までこの間送ったろ。おたくからは新作の話はまだ来てないしな。」
「だ、か、ら!その新作だよ!今度はどんな作品にするとか!なんかねぇーの?」
「あの〜……、お茶入りましたけど……」
「あっ、ありがとね。」
「嗚呼。」
「すみません……。先生とその……『嗚呼!鐘本です。オレとハルは、高校時代からの友人で、今はオレ、黄和(おうわ)出版に勤めてて…』
「黄和出版って……あの、色んな小説が連載されてる大人気月刊誌の【clover's】だしてるところですよね…?」
【clover's】は、私も大好きな雑誌で、毎月発売日に購入してる。
…そういえば、先生の特集もよく載ってるなぁ……
まぁ……私が特に好きなのは、別の作家さんだから、先生の家で、住み込みで働くこと自体は、さほど興奮したりはしなかったけれど……。
「そうなんだよ〜!!ハル大先生のおかげで、売れ行きはここ数年うなぎ登り!!」
「俺は柏木誠だ。……てか、お前俺のこと知ってたんだな。リアクション薄いから、知らねえのかと思ってた。」
「知ってますよ!失礼な。
………ただ私は、先生のファンじゃないだけです。」
間違ったことは言っていない。
私が好きなのは、同じ小説家は小説家でも、恋愛小説家の【櫛宮 理緒先生】(くしみや りお-)だ。
確かに先生の推理小説も読んだことは何回かあるけど、
どれも面白かったけど、、、、
そもそも私は推理小説よりも恋愛小説が好きだから、先生の小説をそこまで真剣に読んだことはない。
「ふっ、あはははっ!さすが加代さんが推薦した子だわっ!面白っ!!!あはははは!!!」
持ってるお茶が溢れるんじゃないかと、こっちが心配になるくらいに大爆笑し出した鐘本さんを一瞥して、先生は不機嫌そうにお茶を啜った。

