好きな子にまで知られた事実。喜田玲央はぶたれた場所に自分の手をそえる。
「いたい…‥…」
玲央はぐっと悲しみと痛みの涙を堪え、周りを見回した。それはまるで自分の存在までをも嘲り笑われているかのようで。
「やめろ…‥見るな…笑うな…‥…」
「えー?なに玲央。聞こえませーん」
耳に入るクスクスとした笑い声。夏海、好きな女の子の軽蔑するような目。
ついに何かに耐えられなくなった玲央は笑っている男子に掴みかかろうとした。
その時。
「あのー。教室の入り口に群がるのやめてくれませんか」
凛とした声がその場に立ちふさがった。
「はー?女子のくせに生意気言ってんじゃ…‥」
「いいから邪魔です。とっとと消え失せてください」
声の主は三つ編みおさげの女の子だった。

