「大丈夫でしたか?」
助けてくれた男の人が聞いてきてくれた。
「はい。大丈夫でした。ありがとうございました。」
「なら良かった。」
どんな顔の人なのだろうか。
その人の顔を見た。
その人は、
竹内悠人だった。
「竹内…さん…。」
そう言うと、
「うおっ!長田っっ!しおらしくなりやがってー。元気だせよっ!」
そう励ましてくれた。
でも、いつもより元気のない私をみて、
「怖かったよな。でも、もう大丈夫だから。」
そう真面目な顔をして言ってきた。
「うん…。ありがとう。」
そのとき、急に冷えきっていた私の体が温まった。
竹内が抱きしめてくれたのだ。
さっきの
痴漢男とは全然ちがった。
温もりが感じられた。
きもちが落ち着いてホッとしたのか、涙が溢れてきた。
「怖…かっ…た…。」
そうつぶやくと、
「そうだよな。でも、もう大丈夫だから。」
そう言ってくれた。
私はしばらく泣き止むことはできなかったけれど、泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。
道場が始まる時間だというのにもかかわらず一緒にいてくれた。
暖かかった。
昔の河野さんの姿も少し残って見えた。
いままでは、河野悠人の時の方が好きだった。
でも、いまは…。
竹内悠人という人物に、特別な想いを寄せていた。