息を切らして駅の階段をかけ上がり、いわゆる駆け込み乗車でギリギリ電車に間に合った。
フッと深く息をつき、何気に座席に目を向ける。

膝の上で文庫本をめくる女性、一瞬何かを感じた。

色白にセミロング、清楚なベージュのコート、淡い口紅。
タイプだなと感じた。

思わず、窓に写る自分の姿が気になり髪を素早く整えた。

俺って……変、ふと思う。

クリスマス間近。

駅前通りは、電飾が華やかになり、クリスマスソングが流れていた。


残業続きで、アフター7にも全く縁がなく女性の気配さえもない生活が半年余り、冴えない会社員だ。


バブル期の頃には、羽振りが良かったと言われている商社マンも、今は何処吹く風か?転職して2年が過ぎようとしている。


1年前に別れた女は、文庫本をめくっている女性より派手な化粧をしていた。