「誰だ、お前は!僕と美優の間を割り込んでくるだなんて!」
「…お怪我はありませんか?」
「貴方は確か…」
「えぇ。社長秘書の小野寺圭人と言います。社長ももう間も無く此方へ到着します。ご安心下さい。本来なら、社長が直ぐに駆けつけるべき所を、私の方が貴女に近いということでしたので、社長の命により、参上したまでです」
「横からごちゃごちゃと煩い男だな。美優を返さないなら、警察を呼ぶぞ!」
「おや?警察を呼ばれて困るのは貴方だと思いますが?我々が何の証拠もなく、ここにいる訳がないじゃないですか。……ねぇ、社長?」
圭人が後ろを振り向くと、洋輔が怖いオーラを身に纏いながら歩いてくるのが見えた。
すると圭人は、クスリと笑うと、美優を洋輔に託し、自分は目の前にいる男の腕を掴み、拘束した。
まさか、圭人に拘束されるだなんて思っていなかった男は、暴れて抵抗した。
しかし、圭人の力に敵わず、大人しくする他なかった。
「美優、大丈夫か?遅くなってすまなかった…」
「洋輔さん…」
「もう、大丈夫だ。……おい、圭人!」
「はい?」
「その男、警察に突き出せ。二度と美優の目の前に顔を出さないと約束させろ」
「勿論。調べた資料と一緒に警察に引き渡すつもりだけど?」
「流石圭人だな。抜かりない」
「…お前が褒めるだなんて…明日は雨だな」
「ちっ…」
洋輔は圭人の言葉が許せなかったのか、機嫌を損ねていた。
そんな洋輔の態度に、圭人は溜め息をついていた。

