「それで、さっきは何があったんだ?」
「っ……何でも…」
「何でもないだなんていわせない。あの時の美優の表情は、驚いたのもあるが、あれは安堵の表情だ。何もない奴が、あんな表情はしない」
「……」
「なぁ、美優。お前に何かあってからじゃ遅いんだ。何があったのか、話してくれないか?」
「っ…でも、それだと洋輔さんに迷惑が…」
「何も知らされず、何かが起きた後に知らされた方が嫌じゃないか?」
「そうですけど…。でも、私の勘違いかもしれないし…」
「勘違いでも良い。今、美優が何に怯えているのか話して欲しい。悩んでいるんだろう?」
美優は意を決して、洋輔に話し始めた。
「……実は…この1ヶ月、誰かに付け回されてるような気がするんです…」
「付け回されてる?」
「はい。あ、でも、仕事帰りにはないんです。決まって学校帰りに、誰かに後をつけられているような気配がするんです」
「ご両親にはそのことは?」
「言ってません。心配させるだけだし、もしかしたら私の気の所為かもしれないですし…」
「でも、美優は嫌な思いをしている。違うか?」
「…そうなんですけど…」
「それに、何か危害があってからじゃ遅い。学校には何時通っているんだ?」
「月、水、木、土の4日間です」
「大抵、帰る時間は同じ?」
「はい。あ…でも土曜日は午後一から通ってます」
「なるほど」
美優から話を聞いた洋輔は、何やら考えるような仕草をしていた。
何も話さなくなった洋輔に、美優は不安を覚えた。

