「眠っちゃってすみませんでした。…それで、ここは何処ですか?」
「海」
「海…ですか?」
「あぁ。仕事で嫌なことがあったり、煮詰まったりした時にはよく1人で来るんだ」
「そうなんですか…」
「あぁ。でも、降りるのは無し」
「何でですか?」
今、まさに降りてみたいと思っていた美優は、頬を膨らまして洋輔の方へと視線を動かした。
「そんな顔をしてもダメだ。もうすぐ11月になるこの時期に、わざわざ外へ行って風邪を引きにいかなくても良いだろう?それに、今日は肌寒い。車の中で我慢するんだな」
「………」
「それに、今日は遊びに来た訳じゃない。外に出るのはまた今度な」
「…また連れてきてくれるんですか?」
「あぁ。お前が望めば、何時だって連れてきてやるよ」
「ありがとうございます」
美優は照れながらも、そう答えた。

