「やっぱり経営者という立場は大変ですか?」

「そうだな……まぁ、決して楽ではないな。自分の責任で、社員を幸せにするのか不幸にするのかが決まって来るからな。それは社員が多ければ多い程、自分の腕に社員の人生がかかってくるんだ。生半可な気持ちでは出来ない」

「そうですよね…。今の長谷川社長の表情はとても辛そうな表情をしています。確かに生半可な気持ちで経営者という立場にはなれないと思います。だけど、たまには力を抜いてみたらどうですか?」

「力を抜く?」

「はい。確かに、上手くいかない、自分が思っているように進まないことがあるかと思います。だけど、そういった時こそ、一度立ち止まって、もう一度自分を省みることも大切だと思うんです」

「………」

「そうすることで、今まで見えていなかったことが見えるようになったり、気付くことも出て来ると思うんです」

「自分を省みる…か…。確かにそれも大切なのかもしれないな。俺は少し焦り過ぎていたのかもしれない」








美優の言葉を聞いた洋輔は、肩の力が抜けたかのように、フッと笑っていた。