「またお一人なんですか?…あっ…まさか、また秘書の方から逃げているんですか?」








初めて洋輔と会った時に、秘書から逃げていたこともあり、美優はまた逃げているのではないかと思ったのであった。
そんな美優の考えに、洋輔は思わず笑ってしまった。









「君の中で俺は秘書から逃げる男なんだな」

「いえ…そんなつもりで言ったわけでは…」








洋輔の言葉に、美優は慌てて訂正をした。
焦る美優の姿が可愛く、つい悪戯したくなる洋輔なのであった。
まさしく、その目は獲物を捉えたような視線であった。
しかし、鈍感な美優が気付くわけなかった。









「今日はちゃんと秘書に断りを入れて来た。まぁ、強ち逃げていることには変わりないがな…」

「…何かあったんですか?」

「まぁな…。こんな所で立ち話も何だから、喫茶店(そこ)にでも入るか」

「あ…はい…」








美優は洋輔に言われるがまま、喫茶店へと入って行った。
洋輔がニヤリと笑っていたことに、全く気付いていなかった。