「隣…良いか?」
「あ、はい。どうぞ…」
男は美優に断りを入れると、隣に腰掛けて来た。
「空を見ていたのか?」
「はい。昔から空を見上げるのが好きなんです。空を見上げていると、私なんてちっぽけに見えてくるんです」
「……何か悩んでいるのか?」
「いえ、そんなことはないです。……ただ、父の会社に就職して秘書になっても、社員はお嬢様として私を見てくるんです。私は父は関係なく、同僚として扱って欲しいのに…」
「へぇー…」
「あ…こんな話をしてすみません」
「いや…。なぁ、そもそも何で父親の会社に就職したんだ?お嬢様として見て欲しくないなら、他の所に就職すれば良かっただろう?」
「他の所に?」
「あぁ」
「そんなこと考えても見ませんでした」
「は?」
美優の言葉に、その男は驚きを隠せないでいた。

