そんな中、田中が口を開いた。
「社長、もう諦めたらどうですか?」
「しかし田中…」
「社長がお嬢様には婿養子を…と考えられていたのは充分承知しております。ですが、長谷川社長はここまで我が社のことを考えてくださっています。そんな方が、我が社の不利になるようなことは決してないと思いますよ」
「………」
田中の言葉に徹也は、大きく息を吐くと、真っ直ぐと真剣な表情で洋輔のことを見つめた。
「……君みたいな優秀な人間が、娘なんかに囚われるだなんてな…」
「美優さんはとても素敵な女性です」
「まさか君がここまで我が社のことを考えてくれているとはな…。そして、私は娘や会社のことを思うあまり、政略結婚にこだわり過ぎていたのかもしれない。……長谷川社長。君がいかに美優に対して真剣なのか、我が社を大事に考えてくれているのかは十分に理解した」
徹也の次の言葉に、何と言うのか予測がつかず、この場にいる誰もが息を飲んだ。

