「長谷川社長とも有能な方が何故我が社を買収したいと思ったんだい?」
「……少し話は長くなるんですが、昔話をしてもいいですか?…まぁ、余り面白くない話ではありますが」
「あぁ。ぜひ、聞かせてもらおうか」
「あれは、とあるパーティーの日でした。我が社主催のパーティーで挨拶回りをしていた私は、疲れて一休みしていました。そこへある女性が現れた。パーティーに来ているということは、何処かの会社関係者だろうとは思っていたんですが、そんなことを関係なしに私はその女性に一目惚れをしてしまったんです」
その時のことを思い出したのか、洋輔はクスリと笑っていた。
「あぁ、すみません。そして、その時は何気ない会話をして別れたんですが、その後、彼女は父親と一緒に挨拶に来てくれた。お互い、素性は知らなかったので、それは驚きました」
「その女性も長谷川社長のことを知らなかったとは…。それと我が社とどのような関係が?」
「えぇ、それはこれから。……私は初めて心から欲しいと強く思った女性に出会った。しかし、職場は知ることが出来たものの、何の接点もない私たちが、それ以上交わることはなかった。そこで、どうしたら良いのかと考えた時に彼女の父親から攻めていけば、いつか政略結婚という形で彼女に近づけるのではないかと思い始めました」
「政略結婚…。君は政略結婚をしても良いと?」
徹也はまさかここでも政略結婚と聞くとは思いもよらず、この数日で何度聞いたのだろうと、苦笑いしながら洋輔に質問をした。

