中に入ると、流石急成長を遂げている会社のパーティーということもあって、たくさんの人で溢れかえっていた。
「凄いな…。これでは長谷川社長に挨拶をするのは当分無理だな…」
「社長…。あちらにうちと取引のある会社の社長がいらっしゃいます。先に他の方へ挨拶したらどうでしょうか?」
「よし、それもそうだな。美優、行くぞ」
「はい」
それから美優は、徹也の指示で何人かの会社の社長と挨拶を交わした。
もう何組目かわからない挨拶回りが終えると、美優はばれないように溜め息をついた。
「疲れたか?」
「あ…すみません…」
「無理もない。私もこういった場には何回出席をしても慣れない。…田中。挨拶回りはあとどのくらいある?」
「大方、終わりました。あとは長谷川社長にご挨拶が出来れば良いのですが…生憎まだ時間がかかりそうですね…」
「そうか…。なら、美優。少し休憩していなさい」
「しかし…」
「なぁに。あとは田中と2人で大丈夫さ。あそこに椅子があるから、少し休んでなさい。疲れただろう?」
「そうですよ、お嬢様。慣れない場での無理は禁物です。幸いにも、あとは昔からの贔屓にしている会社ばかりですので、皆さんお嬢様のことを知っています。ですから、ゆっくり休んでいて下さい」
「……ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」
「じゃぁ、また後で連絡する。田中」
「かしこまりました。ではお嬢様、失礼します」
そう言うと、徹也と田中は、人混みの中に消えてしまった。

