「こちらの我儘で急に会食を設定してもらって済まなかったね。しかも予約までしてもらって…」
「いえ。こちらも藤堂社長にはお話をしたいことがありましたので、ちょうど良いタイミングでした。それに、本来でしたらこちらからお願いに伺わなければいけなかったのですから、これくらいのことは…。それに此処はうちの系列の店となりますので、遠慮なく寛いでください」
「話したいこと?…あぁ、前に言っていた買収のことかね?」
「買収だなんて…。あれはあくまでも業務提携のお話をさせていただいただけです」
「さぁ、それはどうだかな。口では何とも言える」
徹也の言葉に、その部屋の空気が一気に重たくなるのを感じた。
しかし、ここで負けてしまえば、洋輔の願いも叶わなくなってしまうだろう。
何としても、洋輔はこの空気から突破しなくてはいけなかった。
そんな空気を変えるべく、動いたのは他でもない、田中だった。

