「いってきます、ママ。」

また動き出した、負のカウントダウン。

「いってらっしゃい、沙羅。」

キッチンからひょっこり顔を覗かせて、優しく微笑んで送り出してくれるママ。

私は今できる精一杯の作り笑いを返すしかできない。

キッチンから玄関までは少し距離があるし、ママは目が悪いからそれに気づくこともない。

私は玄関の扉に手をかけ、表へ向けて開けようとした。

その時、誰かが私の肩へ手を乗せたんだ。

ゆっくりと後ろを振り向き、目線を上へと向ける。