コンコンーーー「はい」
「音和(おとか)、調子はどうだ?」
「悠(はる)くん、今日も来てくれたのね。大丈夫だよ。」
「そう…あ、コレ。」そう言ってテーブルの上に小さめのラッピング袋を置いた。
「これは…?」
「これはな、俺の友人の弟さんがくれたんだ。“早く良くなるといいですね”って。」
「悠くん…話したの?私が入院中だって。」
「……あぁ。話さざるを得なかったんだ。音和が倒れた日ーー8月28日に。電話が入った時にその場に一緒にいたのがコレをくれた人。それともうニ人…その人の姉と従兄弟。その3人がいたから俺は病院に行けたんだ。許可もなく勝手に話してごめん。」
「……いいの。…開けてもいい?」
「あぁ。」

ゆっくりとラッピング袋を開けると、中にはカラフルな金平糖が入っていた。

「悠くん!みて!可愛い!」
「金平糖か?」
「うん!」
「良かったな。」

私は頷いてピンク色の金平糖を一粒口の中に入れた。

「……おいしい。」

甘ったるくない爽やかな甘さが口の中に広がる。口に入れたそれはほんのり苺の香りがした。

「悠くんも食べて?」
「いいのか?」
「うん!とっても美味しいよ。」
「いただきます。」

悠くんはそう言って黄色の金平糖を口に入れた。

「うん。美味い。…少しレモン風味だ。」
「黄色はレモンなのね…。ピンクは苺だったの。…あ!そうだ!お礼のお手紙書かなくちゃ。悠くん、その…金平糖をくれた方に渡すことは出来る…?」
「あぁ。明日渡すよ。」
「ありがとう!」


ーー金平糖、ありがとうございました。
とっても美味しかったです。


紙には短めの文を書いた。



それから悠くんは毎週金曜日、金平糖をもらって病室にやってくるようになった。
私の病室には先生と家族ーーお父さん、お母さん、悠くん、和(なごみ)ちゃんしか出入りしない。中学校にも近所にも、友達という友達がいなかった。だから家族以外の人からの思いがけぬプレゼントにとても嬉しくなった。ーーー