最初はまた何か勘違いした女がきたのか

と思った。けど彼女はどうも学校に取り

残されそうな俺を心配して起こしてくれ

たらしい。俺は無愛想に返事をすると

窓際を立った。必然的に小さくなる目の

前の彼女。俺のことを見上げる体制に

なっている。

「あなたは誰ですか?」

鈴のような綺麗な声が俺の耳を震わす。

めんどくさい。はやくここからいなくな

ってほしい。

大体の女は顔を目当てに寄ってきて、

冷たくすると泣いて逃げる。

泣けばいいなんておもわないでほしい、

しかし栞は違った。

力強い目で俺を見つめ、彼女の意思を

はっきりと声にだした。

この子は俺になびかない。本能的にそう

思った。他の奴とは違う。

そう考えると自然と笑みがこぼれた。

下の名前で呼ばれるのを極端に嫌がった

栞、俺に一回も微笑まなかった栞。

こんな扱いを受けたのは初めてだ。

いいな、この子を手に入れたい。





必ず、彼女の笑顔を俺に向けて見せる。