≪我々は君を試すことにした。≫



この二日間の長かったこと。
僕は毎日投屋に走り手紙の催促をした。
その度に眉間に皴を寄せ、手のひらを天に翳すおっちゃんの姿を見たし、
じいさんにも叱られた。
夢ばっか見ずに勉強しろって。

でも、今雲屋からの手紙は
僕の手の中にある。
投屋から走って数百メートル。
大木の下で、僕はその手紙を開いた。



≪やぁ、少年。
我々に手紙をくれるとは光栄だ。
手紙は読ませていただいたよ。
熱い憧れの気持ちは我々としてもとても嬉しい。
そして君が雲屋になりたいという事も分かった。≫



風が吹く。
紙が揺れる。

胸が、高鳴る。


≪だが、我々は他族を受け入れてはならない規則がある。
 それについては雲屋領域規定を読んでいただけるとありがたい。≫


ストン、と腰と肩が堕ちた。
この二日間の夢があっけなく、
潰れたように思えた。

しかし、続きには
意外な文章が綴られている。


≪しかし、
自ら乗り込んでくる者を、
排除するつもりは"私には"無い。
君が望むのならば、
君自身の力で乗り込んできなさい。
私はそれを受け入れよう。
君の度胸に、
私は応えることとしよう。≫



心が躍り、
思わず立ち上がった。
立ち上がって、
大木に向かって吼えた。

受け入れてくれると、
船にさえ乗り込めれば、
僕も雲屋になれる。

その時、
頭上を雲屋の船が通りかかった。
僕が大手を振ると船の底のハッチが開き、
何かが、
落下傘と共に降ってきた。
僕はそれをギュ、と胸に抱き、
大船に大手を振る。
雲の彼方に消え去るまで、振り続けた。

そうして、僕は帰路に着く。
今夜は眠れそうに無い。