街はいつだって賑やかだ。
今日は丁度良く、
投屋の門が開いていて、
おっちゃんが雲屋に
届け物をしていた。
様々なサイズの銃口を
丁寧に磨き、
其処に荷物を置く。
そして徐に引き金を引く。
荷物は頭上を軽々と超え、
雲屋の大船の
竜骨付近に開いたハッチへ
姿を消した。
そのお礼にか、
雲屋から一筋の光が
落ちたかと思うと、
真っ白な手紙が振ってくる。
そこで、思いついた。
手紙を出そう!と。
投屋ならば手紙くらいは
届けてくれる。なんせ、
空に荷物を打ち上げるくらいだから。
「おっちゃん!僕だよ、アートだ。」
「あぁ、坊主か。どうした、自分から荷物を取りに来てくれたのか?」
「違うって。この手紙を、雲屋に届けて欲しいんだ。」
「手紙?まぁなんだか良くわからんが、良いぞ。そこの銃口の上に置け。」
空気で打ち上げられる為、
手紙のような軽いものの場合、
ちょっとした重石をつける事になる。
銃口の上に手紙を置くと、
直に自動でロックがかかり、
重石が手紙を覆った。ハイテクだ。
「打ち上げるぞ!下がってろ!」
ビー、とブザーが鳴り響き、
ドンッという空気の震えが肌に伝わった。
僕の手紙は頭上高く飛ばされ、
船のハッチの中へと入り込んだ。
胸がドキドキした。
交渉がうまくいくかどうかより、
今、目の前に自らの憧れが居て、
其処に手紙を送ったというちょっとした繋がりが嬉しかった。
僕は投屋のおっちゃんに手を振るとすぐさま、家へと走った。
