理由なんてない、そういえばいいのに。



「空ちゃん、視力落ちてるよね?」



…………そうだね。

落ちてるよ。


「気づいてない、なんて言わないよね?」


「……うん。気づいてる。」


「元気ないのも、学校に行かないのも、それが原因でしょう?」


「学校に行かない理由はあってるよ。

元気がないっていうのは………元気がないんだとしたら、学校に行かなくて、時雨たちに会えない、一人は寂しい………とかかな?」


自分で言いながら納得できた。


「学校行ったらいいのに…」


「行けないよ……

視力を失ったわけじゃないけど、見えにくくなった。

今まで当たり前だと思ってたの。鮮明に見えるのが。

………普通に生活していても視力は落ちる。

でも!………私の視力が落ちたのは癌のせいだ。そうでしょう?

それが嫌なのよ。進行してる証でしょ?

自分の意志で治療をしなくて、その癌にやられて見えない視界で………今までの景色を、同じ気持ちで見ることはできないから。

…………だから、学校には行かない。」


「そっか。

空ちゃんが後悔しないならそれでいいよ。」


雪斗先生には感謝しなきゃね。