グイッっと私の手を誰かが引っ張った。
そのまま私は腕の中にすっぽりおさまり抱きしめられた。
「空の知り合いかなにかは知りませんが、今日約束してたのは俺たちです。
空は譲りませんから。
………失礼します」
そう言って私の手を掴んで引っ張り、その場を去った。
私を引いて、抱きしめて、喋ったのは、全部時雨だった。
「……時雨。
ありがとう………」
どちらともなく止まって。
「気にすんな。俺があの人たちに空を譲りたくなかっただけ。
ほら、あとはそのへんフラフラみて、帰ろう。」
「うん……」
ありがとう…
「あのね、別にいいんだけどさ、いつまでいちゃつく気?」
………
「ごめんっ!」
「ククッ俺はあのままでも良かったけど?」
「いやいやいや!」
とっても近かった。
とにかく近かった。
顔に熱が集中した。
今日会った嫌な人たちの記憶を吹き飛ばしてしまいそうな風が吹いていた。
あ、強風ってわけじゃなく、そんな感じの優しい風が吹いていた。