私が呆然としている間に、心が折れたのかがっくりとうなだれて膝に手をつける魚屋さん。
案外メンタル弱いのかなと思ったけど、きっと人生のあらゆる傷に塩をたっぷりと塗られた上に、ほじくり返され、また更に塩を塗られたんだろう。まぁ、そこについては触れないでおこう。
何か魚屋さんが不憫に思えてきた。

「はい、これ。お金ある?」
「あっはい!」
ドSくんに商品を手渡されお金を渡す。心折れた魚屋さんの膝裏を容赦なく蹴り、勘定された。さすがと言わざるを得ないドSっぷりだった。
動揺しているのが私だけということは、きっといつもそうなんだろう。

「はい、おつり。驚かせたね。」
おつりを渡してくれた。さりげなく優しい。こやつ…モテるな。

「あのおっちゃん頭固いし、声でかいし、独身だけど、慣れれば大丈夫だから!」
「……」
魚屋さんがもはや何も言わなくなっていて、さすがに少し哀れではあった。

「あ。これ生鮮食品だから、まだ話していたいけど、さっさと帰った方がいいよ。」
ドSくんの言葉に私はハッとして頷いた。

「君、転校してきたんだよね?なら学校で会えるか。じゃあ、また。」
そう言ったかと思えば、軽く手を降ってさっさとどこかへ消えてしまった。
まだお礼も言ってないのに、でも何かすごい人だったな…。聞きたいことあったんだけど、まぁ学校で会えるならいいか。