「全く、これだから都会もんは…!」
くどくど話始めたけど、もしかしてこれ説教始まっちゃうパターン?逃げてもどうせ何か言われるだろうし、もういいよ…諦めるよ…諦めて説教終わったら魚屋さんのすねも回し蹴りして逃げるよ…

「あ、魚屋さんのおっちゃんが引っ越してきた女の子いじめてるー。」
いきなり素晴らしく皮肉たれた声が響いた。魚屋さんが硬直したのを見て、私も振り向いた。そこには今叫んだのであろう青年が立っていた。…ん?っていうかどっかで見たような…?

「おっちゃんって女の子いじめるのが趣味だったんだ。引くわー」
その青年はいかにもってぐらいの嫌味を続ける。
そうしていると、なんだ?なんだ?と面白そうに街の人達が集まってくる。
慌てたおっちゃんが、何か言おうとした瞬間に、その青年はとどめを刺した。

「そんなんだから、50代なのにまだ独身なんじゃない?」
冷たい本気で軽蔑したような声だけど顔は少しニヤついていて、地味に天性のドSが滲み出ていた。
おっちゃんがピシッと固まり、居心地が悪かったのか私に向き直る。

「わっ、わーったよ!買い物だな!何が欲しいんだ?」
「ヒィ!?」
いきなりこっちを見た魚屋さんに、思わず足がすくんで、一歩下がった。
そのまま動けなくなっている私を気遣ったのか、ドSくんが私の手からパッとメモを取った。

「どうでもいいけどメモ持ってるの見えるでしょ。初めての子なんだから、そのくらい気配りしてあげればいいのに。そんなんだから独身なんだよ。」
はっと鼻で笑いつつ、メモを見ながらヒョイヒョイと商品を集めていくドSくん。

「気配りも出来ないとか俺より子供かよw」
魚屋さんはついにブチ切れた。

「療介(リョウスケ)!!お前いつもガキのくせになぁ?!」
「もう高校生だし。」
いつの間にか、私もずいぶん落ち着いてきたようで、それを見ていた街の人達は、「今日も平和ねぇ。」と言いたげな顔をしていた。

というかあれ?療介?