「わぁーいいところじゃなーい♪」
車から降りて広がる景色を見て叫ぶ母親。
うん、まぁ確かに綺麗な景色だけど、それより早く私帰りたいんだけど、友達とろくに話もできてないんだけど。
そういう思いを込めて、私は父親のすねに向かってバレないように、カーブをかけながら石を投げた。よっしゃ命中。

「いったい!!!だれ!!!!?」とか叫んでるけど全力で知らんぷり。

「まぁいいじゃない。入りましょうよ!」
母親の言葉に渋々家の中を回った。確かに綺麗な家だ。充分設備が充実している。少し嬉しい気もするけど、それでもまずは友達が欲しかった。

「ん?どうしたぁ樹琴?不機嫌かぁ??」
父親が珍しくドヤ顔で言ってくるもんだから、今度はさっき石を強打させたところに回し蹴りを喰らわせてやった。なんか悶絶してるけどざまぁみろ。空手なめんな。

「友達から引き離して、無理矢理連れて来といて不機嫌かぁ??は無いでしょクソジジイ」
こっちは高校生ライフ満喫しようと、はりきってきた思春期真っ最中の15歳だぞ?

「まぁまぁ、樹琴。そんなにお友達が欲しいなら、おつかい頼むついでに家の近くだって言うから、あなたが転入する高校。見てくればどう?」
高校なら結構気になってるところあるけど、ナチュラルにおつかい頼みやがって。

「高校は見に行きたいけど、おつかいならそこでくたばってるクソジジイに行かせてよ。」
おつかいなんて、初めての土地でやったらはじめてのおつかい並みに苦労するに決まってるだろ。

「大人はね、近所付き合いというものがあるから、挨拶とかもあるし、はよいけ。」
世の中大変不条理である。雑に書かれた買い物のメモを握らされ、私はさっさと家から追い出された。