ゴールデンウィークの話し合いから約3日。ゴールデンウィーク約一週間前、夕食時にいきなり母が切り出した。

「あっそうそう、今年はねぇトルコに行くことにしたのよ!」
あぁそうなんだどうでもいいや、と言おうか悩んだけど、さすがにあれかと思い、

「あぁ、割りと親日だから旅行するには平和でいいかもね。」
という適当な言葉で返しておいた。

「なんだよ、トルコ嫌か?楽しみじゃないのか?」
その反応が不満だったらしく、父さんが頬を膨らませながら言ったもんだから、私は容赦なくガッと父さんの眉間に箸の持ち手をぶち当てた。

「そうだねぇ、私も行くなら楽しみかもしれないねぇ!どうせ今年も何故か一人分チケットが足りないんでしょ?不思議だね!!」
「いっ!!いたい痛い!痛いって!!ごめん!!ごめんって!!」
私が言いながら、箸をぐりぐり押し付けていると、母さんが笑い出した。

「あら、よく分かってるじゃない!さすがお母さんの子ねぇ。察しがいいわぁ!」
なんかその言い方、怖いんですけど。
二人っきりで外出したいなら、そう言えばいいのに。
もう大分慣れてきたけどさ、初めてゴールデンウィークに家に放置されたの五才だからね?途方に暮れるどころか、人生に絶望しかけたんだからね?
まぁそれでも、こんなにいい子に育ったのは私の生まれ持っての…ああやめようむなしくなってきた。

「あのさ、その代わり私今年は、友達の家に泊まるから。」
そう言うと、あら、と母さんは嬉しそうに笑った。

「それなら安心ね!じゃあお金渡しとくわ。」
まぁ元よりちっとも心配していないのは、目に見えていたからもう何も突っ込まないけど、こういう物分かりがいいのはありがたい。
まだぶっくさ言っている父さんの顔面に、さっきテーブルを拭いたふきんを投げつけて、私は夕食の残りを食べた。